父の思い出とともに

私が大学生の頃、両親は初めての持ち家を購入しました。とはいっても中古の一軒家だったのですが、それまで転勤ばかりでずっと借家に住んでいた両親にとっては、とても大きな幸せな買い物だったようです。私にとっては、その家に住み始めてほどなく就職で家を出たので、住んだ家というよりも帰省するための家となりました。結婚をしてからも毎年お盆とお正月には、必ず帰省していました。古い家でしたが立派な庭があり、父は縁側に座ってたばこを吸いながら、いつもその庭を眺めていました。私はその父の背中越しに眺める庭が大好きでした。一昨年父が亡くなり、母が一人でその家を守っていましたが、高齢の母には家が古くて寒いことや、庭が広すぎて自分で世話をするのが大変ということで、その家を売却することになりました。売れなければ取り壊して更地にすると言っていたのですが、結局若い夫婦に売られることになりました。もう自分の実家ではありませんが、あの場所に行くとあの思い出がある・・というのは嬉しいことです。父の思い出と共に、まだその家は存在していて人の生活に役立っているのです。